大好きな団子屋の閉店ー事業継承と地方衰退について考える
豊かな島づくりの豊嶋です。
今住んでいる埼玉県小川町。
ここに最初に訪れたのは、実は7年ほど前のことです。
友人が「半農半X(自給自足で農業をしつつ、自分の仕事を持つ)」というライフスタイルを目指して移住したことがきっかけでした。その時に友人から、
「めちゃくちゃ美味しい唐揚げ巻きがある」
と教えてもらいました。ちなみに、そこは団子屋。そこの唐揚げ巻きです。
忘れられない、唐揚げ巻き
実際に食べてみると、本当においしい。
大袈裟ではなく、あんなに美味しい海苔巻きは食べたことがありませんでした。

海苔、お米、レタス、唐揚げ。
それぞれが美味しいのですが、それらすべてを一つにまとめ、融合・調和(ハーモニー)させているのが、「自家製のマヨネーズ」。これが絶妙なのです。
あれは、一体どうやって作っているのだろう。
それから友人を訪ね、また仕事の関係でも小川町には2か月に1回ほど訪れるようになりました。
軽く数えても50回以上、その団子屋の「唐揚げ巻き」を食しています。
私の身体は、一部唐揚げ巻きでできています。
衝撃的事実。店主高齢につき閉店
基本的には健康志向のため、有機野菜を中心とした自炊をしていますが、唐揚げ巻きは定期的に食べていました。
そんなある日、仕事の合間のランチに、いつも通り唐揚げ巻きを買いに行った際、白い紙に黒字で書かれた告知が目に飛び込んできました。
「店主高齢につき、2026年1月末を以て閉店します」
―――!? なんですと?
本当に愕然としました。
今まで生きてきて、お気に入りのお店はいくつかありましたが、幸いなことに「閉店」という場面に出くわしたことはありませんでした。
初めて直面する、愛するお店の閉店。
自分が愛してやまない唐揚げ巻き。
いつまでも傍にあると信じて疑わなかった唐揚げ巻き。
いつまでもあると思うな、親と唐揚げ巻き。
本当に衝撃的で、愕然としました。
思わず店主と、いつも接客してくださる方に、
「衝撃的で、眠れないかもしれません」
とお伝えしてしまいました。(一応、その日は眠れました)
事業承継と地方衰退
冗談はさておき、本題へ。
国難とも言える状況にある日本には、数多くの社会課題があります。
その中でも今回の実体験を通じて、「事業承継」と「地方衰退」というテーマを、改めて考えさせられました。
私の住んでいる町も、若年層の移住者は一定数増えていますが、それでも若者の流出は多く、同時に高齢化の問題にもさらされています。メインストリートの商店街も、最盛期の賑わいを感じさせる面影はあるものの、今ではシャッター街となり、寂しい光景が広がっています。
今回の団子屋も、地域の方々に愛されると同時に、県外からの観光客にも人気のお店でした。特に土日には多くのお客さんで賑わい、日によってはお昼過ぎには商品が売り切れてしまうほどです。
この団子屋は、地域にとってアイコニック(象徴的)な存在だったと思います。
そうしたお店が「事業承継」されることなく姿を消していくことは、地域経済や、地域内外の人々の心に与える影響も非常に大きいと感じています。
事業は「放っておけば」消えてしまう
もちろん、「生まれて、無くなる」という現象自体は自然の摂理です。
しかし自然界では、寿命を終えたものは次の世代へ「種」を残し、その種が芽吹き、やがて葉や花を咲かせるという循環があります。
一方で、人間が生み出した事業は、それとは少し異なります。
何か手を加えなければ、現象的・物理的に消え(倒産・閉店)、次世代へ受け継がれなければ、そのまま完全に無くなってしまう。
ここに、人間界・組織の厳しさがあると思います。
事業が途絶えないために必要なこと
では、事業が途絶えないようにするには、何が必要なのでしょうか。
今回の団子屋の個別事象から少し離れるかもしれませんが、私も長年企業でサラリーマンをしておりましたので、話を広げて「企業経営における事業継承」の文脈で考えてみたいと思います。
私なりに、最も大切なことは、創業者の想いを、組織全体の想い(理念)として言語化し、形として残すこと。そして、その理念を継承していくことだと考えています。
その上で、時代の変化に合わせて事業を発展させていける二代目社長、役員・幹部を育てているかどうか。
ただ人を採用すれば良いのではなく、理念を継承できる人財を「育てること」が重要だと考えています。
私自身、さまざまな学びや、仕事での体験等を経る中で、
「理念の確立と継承」
「次世代教育」
この二つが大切だと、自分なりに行き着いています。
京セラ名誉会長・故 稲盛和夫氏のもとで、京セラ黎明期を支え、後に社長となった伊藤謙介氏は、こう語っています。
「企業理念が希薄化したとき、企業の命運は尽きる」
事業承継で悩む経営者を支えたい
現在の日本では、経営者の高齢化に伴う事業承継の問題が顕在化しています。
先日、とある企業の経営者様とお話をする機会がありました。御年70歳を超え、事業承継のタイミングに差し掛かっている方です。経営数字(売上)をどう上げるかという、足元の課題に意識が向いていらっしゃいました。
もちろん、売上は事業を続けるために不可欠です。
ですが私は、「今こそ理念・ビジョンを再定義すること」、そして「次世代経営者の育成」が重要であることをお伝えしました。
「確かに。それが今最も大事なタイミングだ」とご理解頂き、その場で約2時間、経営者の想いや歴史を伺い、後日理念や、今の社会的な背景も踏まえたビジョンの素案をご提出することになりました。
事業承継が、地方の未来をつくる
数十年以上続いてきた企業やお店は、「社会から求められ、顧客から求められてきた」からこそ存続してきたはずです。
そうした事業は、地域社会、ひいては国家の宝として、後世へと受け継がれてほしい。そのためにも「理念確立と継承」「次世代リーダー育成」が不可欠だと、改めて感じています。(もちろん、それ以外にも事業継承において大事なことは沢山あると思っております)
新しく生まれるものより、無くなるものが多ければ、衰退の道しかありません。
新しい事業やリーダーの誕生を目指しつつ、同時に、既存の素晴らしい事業やお店を受け継いでいく。
それによって、地方衰退を食い止め、地方創生へと歯車を逆回転させていく。
自分にできることは限られていますが、志ある皆様とともに、地域社会、企業、日本のより良き未来に向けて歩んでいけたら嬉しく思います。
愛してやまない団子屋の閉店はとても悲しい(冒頭は冗談交じりで大変失礼いたしました。本当に心から寂しく、また残念に思っています。いつか再開されることを切に願っています)ですが、改めて大切なことに気づかせて頂くことができました。
人は何かを失うときに、何か新しい学びを得るのかもしれません。
「大切なものを絶やさずに手渡していく」、「志や想いのバトンを受け継いでいく」そういう社会であってほしい、そう強く感じた出来事でした。
あとがき
後日談ですが、先日近所に和菓子店を見つけました。保存料・添加物無添加のこだわりの大福がとても美味しいお店。そこも店主高齢(に伴う体調不良)で年末をもって休店とのことでした。とても残念ですが、志ある若い方々の力で地域、そして日本を元気に盛り上げていきましょう。
豊かな島づくり
豊嶋
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