寿司屋の名店「久兵衛」繁盛の秘訣―匠の技と「人の道」―
豊かな島づくりの豊嶋です。
先日1月9日に、リアルインサイト社主催の講座説明会に参加した特典として、寿司屋の名店、「久兵衛」に無料でご招待いただきました。(無料で九兵衛のお寿司とは、驚きです)
今回は、私が実際に体験したことや、きいたこと、後日調べてみたことを基にコラムを書いていきます。
人の道や、日本の心をベースとした、「王道経営の実現」を、企業向けの事業の柱に掲げている私にとって、大変学び深く・有意義な時間となりました。そういったテーマに関心のある方は、ぜひ続きをご覧くださいませ。
実際に訪問してみて感じたこと
今回訪れたのは、銀座久兵衛の本店。5階のカウンター席でランチをいただきました。
そこには、一つ一つ提供される寿司の味はさることながら、それに至るきめ細やかな準備、心を磨くかのごとく磨かれた包丁、効率性よりも質を重んじる姿勢や心遣いなど、味以外の部分が強く印象に残り、また個人的には大変学びとなりました。
清潔さと整理整頓
まず入店して席について驚いたのが、カウンター周りの清潔さ、整理整頓です。本当にピカピカで、無駄なものは一切置かれていませんでした。「禅」の世界が、その空間に広がっているようです。
こういった基本が徹底されていることこそが、一流の一流たるゆえんなのかもしれません。
磨き抜かれた刃
刀が武士の命(精神)そのものであるかのごとく、職人にとっての包丁もまた然り。
極限にまで磨き抜かれ、いぶし銀に光り輝く包丁に、思わず目を奪われました。
磨き抜かれた包丁は、寿司に向き合う職人の気概(精神性)そのもの。
これは後で調べたことになりますが、磨かれていない包丁の場合、魚の繊維を壊してしまうことになるそうです。すなわち、いただいた魚の命そのものを、無駄にしてしまうことになる。
直接そういった話を聞いたわけではありませんが、刃を研ぐことは、命を最大限に活かし、無駄にしないこと。
そういった日本の心が、ここにあるのかもしれません。
効率性より大事なもの
そして驚いたことに、久兵衛には、お魚のネタを常時置いておくカウンターがありません。
お客様に新鮮なネタを一貫ずつ提供するために、都度出しているようでした。

効率的なのは、ネタをカウンターに置いておくことだと思いますが、鮮度の高い最高の寿司を提供するために、そのようにしているとのこと。また、仕切りがなくなることで、板前さんとお客側との距離感がフラットになるとも感じました。
さらに、シャリを置いておく「おひつ」も、通常のものより小ぶりになっています。
大きい方が多くのお米が入りますが、その分空気に触れることで、温度・水分量・香りが変わり、劣化してしまいます。米を極限に活かし、最高の状態に保つために。
効率性よりも質を重んじられていることを、随所に感じました。
三代目の気遣い
清潔さ、仕組み、匠の技術など、そういった点も印象的でしたが、何より心に残ったのは、三代目の気遣いです。
明るく柔和な雰囲気で、人柄に自然と引き込まれていきました。
私自身、高級寿司屋にほとんど行ったこともなく緊張していましたが、偉ぶる様子は一切なく、時折冗談も交えながら、ランチの空気感を和ませてくださいました。
また、その場のトップとして他の板前さんに的確な指示を出し、現場全体を見渡しながらも、目の前のお客様への「目配り・気配り・心配り」を欠かさない。その姿がとても印象的でした。
隣の方との会話中に、提供されたエビが少し冷めてしまった場面がありましたが、笑顔で「温めなおしましょうか」と声をかけてくださいました。
寿司を提供しつつも、「心を提供する」。これは、商売において最も大切な部分なのかもしれません。
技の前に「一流の人間であること」
また、4階にある歴史パネルの展示室も見学させていただきました。
それを拝見して、銀座久兵衛が最も大事にしているのは、「人の道」「一流の人間性」であり、その上で美味しい寿司を提供しているのだと感じました。

寿司を握った久兵衛の初代・今田壽治(ひさじ)氏は、日産グループ創業者の鮎川義介(よしすけ)翁のもとで、寿司を握りながら「人としての道」を徹底的に学び抜いたといいます。
久兵衛に足繁く通っていた芸術家・北大路魯山人(ろざんじん)は、こう評しています。
「寿司そのもののうまいこともさることながら、久兵衛の人間的魅力にひかれて来るんだとみて間違いない」
匠の技術、その根底にあるのは「人の道」。
これこそが久兵衛を繁盛店へと導いた秘訣なのだと、強く実感しました。
寿司屋ですから、もちろん寿司の美味さは大事です。しかしその根底には、目の前のお客様への心配りや人間的な魅力があり、それが「また行きたい」と人を惹きつけ続けているのだと思います。
その伝統が今も継承され、いまや日本のみならず世界中の人々を惹きつけてやまない、高級寿司屋として発展してきたのだと実感しました。
そして今回、幸運なことに、初代・二代目から受け継いだ三代目の今田景久(かげひさ)さんに、直接お寿司を握っていただく機会に恵まれました。
実際にお寿司をいただきながら、その気遣いや所作を拝見し、なぜ久兵衛が名店であり続けるのか、人が感動し、人を惹きつけてやまないのか。その一端を垣間見たように感じています。
本物、一流の仕事とは何か。
私自身、大変多くの学びをいただきました。

王道経営の実現――幕賓・参謀として――
西洋型資本主義のもとで、「今だけ、金だけ、自分だけ」が蔓延した時代ではありますが、その一方で、人の道をベースとした事業へとシフトする流れも生まれています。そして、そういった事業こそが、十年、百年と永続的に継続・発展していくのだと、強く感じています。
そしてそれらは、新しい考え方ではなく、「三方よし」や「道徳・経済合一」といった経営哲学、商人道として、末永く日本の中にあったものです。
今の時代だからこそ、日本のみならず世界に発信すべき、日本が育んできた叡智だと、私は信じています。
今回、久兵衛で実感した「人の道」は、私自身の人生のテーマでもあります。そしてこの「人の道」「人徳」「人間的な魅力」を軸にした王道経営の実現こそが、「豊かな島づくり」として、企業様向けにご支援していきたい大きなテーマです。
久兵衛の事例にもあるように、先代は日産グループ創業者・鮎川義介氏から多くを学んでいました。
経営や会計だけでなく、粋な食文化、目配り・気配り・気遣いといった「人の道」「接客の妙」まで、伝授されていたそうです。
事業発展の裏には、「智慧的な支え」があったことを強く感じました。
そして「豊かな島づくり」でも、「志ある経営者」の幕賓・参謀として貢献していきたいと、あらためて強く感じています。
今回のコラムを読んで、「スキルや技術の前に大事なこともあるのではないか」や、人の道、人としての在り方、商売や経営の在り方について、思いをはせるきっかけになりましたら甚だ幸いです。
豊かな島づくり
豊嶋
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